ハッとして!BOOK

本好きによる、本好きのためのブログ。主に小説。自分でも書きます。

ラブホテルが舞台の短編集!桜木紫乃『ホテルローヤル』の感想&あらすじ。

桜木紫乃さん『ホテルローヤル』を読んだぜ!

2013年の直木賞受賞作品。実家の本棚で眠っていたのを持ち去りました。

「ラブホテルが絡むってことは官能系なのかな?」とは予想していたんですけど、エロ要素はほとんどなくて、どこか寂しくて切ない、大人の世界が描かれていました。

若すぎて理解できない世界も多いけど、虚しさの中に、時折光が差し込むのが見事でした。

 

 

『ホテルローヤル』の概要&あらすじ

『ホテルローヤル』は2013年に発表された桜木紫乃さんの短編小説集。桜木さんの出身地である釧路近郊のラブホテルが舞台です。

以下、amazonよりあらすじ。

北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開く――。

恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昂揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。

人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。 

物語は、1つのラブホテルを取り巻く人々をオムニパス形式で描いています。

「官能色の強い小説なのかな?」と思いきや性描写はほとんどありません。終始、男女関係の虚しさに焦点が当てられます。

 

特徴的なのは、読み進めるごとに時系列を遡ること。1章では、ホテルローヤルが既に廃墟となっていますが、最終章はホテルが建てられる前の様子が語られています。

「この人たちが前の章で語られてた人か…」と伏線を回収する様子にも注目です。

f:id:omosiroxyz:20170317120358j:plain

ちなみに、『ホテルローヤル』というラブホテルは実在していたようで、しかも著者桜木さんのお父さんが経営していたそうです。

家業の手伝いとして、15歳の頃から部屋の清掃等をしていた経験から、男女関係への冷めた視点が形成されたようですね。

参考:桜木紫乃 - Wikipedia

 

以下、多少のネタバレありです。

『ホテルローヤル』の感想&見所

『ホテルローヤル』は短編集です。章ごとに概要と感想を書いていきます。

 

1章:シャッターチャンス

こちらは若いカップルのお話。ホテルローヤルは既に廃墟となっている段階です。

恋人の「ヌード写真家になりたい!」という目標に振り回される女性を描きます。

夢を応援したいけど、「モデルになってほしい」と無理な要求を突きつけられて困惑。強く意見することもできず、言われるがままに体を預けていきます。

彼氏の駄目男っぷりと、それに振り回されちゃう駄目女っぷり。恋をすると、どうしてこうも盲目になってしまうんだろうか。

 

2章:本日開店

貧乏寺の住職の妻が主人公。ホテルローヤルが閉店した直後の段階です。

彼女は寺の経営を支えるために、檀家に性サービスを行い、お布施を受け取っていました。

しかしある時、檀家の代替わりで若い男と寝ることとなり、恋心を抱いてしまいます。それを住職である夫は察しちゃうんです。

いやもう「こんなことあるの!?」って感じですけど、似たようなことが現実でもあるんでしょうね。お金と性が絡むとドロドロだぁ。

 

3章:えっち屋

オーナーの娘と、営業マンの話。ホテルローヤルの閉店直前の話です。

ラブホテルの娘として生まれて、世の中と性愛を冷めた目線でしか見れなくなってしまった雅代。閉店直前に、何かが吹っ切れたように営業マンを誘惑します。

母親は男を作って家出、父親も病気で入院。事務室で一人寝泊まりする娘。

孤独感と家族のこじれ感がすごい。彼女はこれから何を希望に生きるんだろう…。

 

4章:バブルバス

中年夫婦の話。ホテルローヤルは経営が厳しくなってきている段階です。

子育て、不登校、貧困、介護…。忙しく厳しい毎日を過ごしていた夫婦が、不意にラブホテルを見かけて中に入っていきます。

ラストが好きだった。

「5千円でも自由になったら、わたしまたお父さんをホテルに誘う」

あの泡のような二時間が、ここ数年でいちばんの思い出になっていた。

ようやく希望が見えた…って思った。苦しい日々の中で、愛が希望になるって素敵だ。

 

5章:せんせぇ

高校教師と女子高生の話。ホテルローヤルが経営危機となる発端が、この2人です。

両親に家出されて独り身になった女子高生と、妻が尊敬する教師と浮気していると知った高校教師。一線引いた関係であった二人は、やがて孤独を埋め合わすように近づきます。

ホテルローヤルが経営危機に陥った理由は、男女の心中事件があったからだと他の章で語られています。つまり、この2人が原因です。

生きる希望を失っていた2人は、死ぬ間際だけでも、居場所を見出せたのかな。

 

6章:星を見ていた

ホテルの女性パートのお話。ホテルローヤルは、経営全盛期でしょうか。

ミコは、10歳年下の無職の夫と同居しており、3人の子供とは音信不通。ある日、息子がヤクザになっていて、事件を起こして逮捕されたと知らされ困惑します。

無職の夫でも、心の支えになっているとわかるラストが良い。愛は生きる希望だ。

 

そして、ちょっと関係ないけど、ミコが大切にしてる母の教えの破壊力がすごい。

「いいかミコ、おとうが股をまさぐったら、なんにも言わずに脚開け。それさえあればなんぼでもうまくいくのが夫婦ってもんだから」

脚開け!って教えがあったからこそ、夫婦仲良しなんだろうけど、にしても鋭利。

 

7章:ギフト

ホテルオーナー夫婦のお話。ホテルローヤルの経営が始まる直前ですね。

浮気性の大吉には、妻子がいるにも関わらず、20歳年下の愛人るり子がいました。ホテル経営、家族、愛人とその子供の全てを背負う決意をするんですけど、やっぱり無理。

家族は崩壊。「るり子を幸せにしよう!」という希望の元に、ホテル経営を始めます。

 

しかし、読者は既に結末を知ってます。

ホテルは廃墟になるし、るり子と仲違いするし、死んでも誰も骨を受け取ってくれない。

あぁもう虚しい虚しい。

 

まとめ

終始、虚しさや切なさを感じる小説でした。

個人的には、4章・6章のように重苦しい生活の中で、夫婦愛が希望となっているストーリーが好きでした。暗い物語に差し込む光のよう。

僕にはまだまだ早い小説だったかな。10年後読んだら、また違う感覚かも。

 

 ▼暗い雰囲気が好きなら、森見登美彦さんの夜行もおすすめ!本屋大賞ノミネート。

▼グリコ・森永事件を題材に繰り広げる本格的なミステリー!本屋大賞ノミネート。